遺伝
 


一口にクローン技術といっても、実は2種類の方法があります。 1つは卵細胞クローン、もう1つは体細胞クローンとよばれる方法です。 まずはこの2種類のクローン技術について内容を理解することにしましょう。

卵細胞クローンとは一体どういったものなのか? という問いに簡単に答えるならば、 「人工的に双子、三つ子……といった多胎児をつくってやること」だと答えてあげればいいかと思います。
実際には、牛や豚などの畜産動物の生産において、良質の動物を数多く出生させる目的で行われます。 例えば、質の良い雌雄の受精卵をあるていど分裂が進んだ状態(仮に16個とする)で取り出します。 それを核を取り除いた別の卵子に挿入し、別の雌の子宮で育てるといった方法です。 すると、遺伝情報の同じ(質の良い雌雄を両親に持った)16つ子が誕生するという仕組みです。
ただし、この方法では、同時に生まれる子供の遺伝情報は同じですが、その遺伝情報は、親である雄と雌の情報を半々に受け継いでいます。 つまり、親子の関係でいえば、通常の親子と違いの無い遺伝情報をもっているわけで、一般にイメージされているクローンとは違ったものかと思います。

その一般にイメージされているクローン、たとえば、ある人物の遺伝情報から、 その人物とまったく同じ人物を複製するといったクローン技術を体細胞クローンといいます。
体細胞クローンでは、親となる成体の細胞をつかいます。 血清飢餓培養されて休眠状態にした体細胞を、核を取り除いた卵子に挿入し、別の母体の子宮を利用して子供を誕生させます。
この方法で誕生した子供は、親とほとんどまったく同じ遺伝情報を持つことになるのです。

体細胞クローン技術を用いてはじめて生まれた哺乳類は、前述のクローン羊ドリーです。 これを応用すれば、技術的には人間のクローニングも可能ということになります。 ドリーの衝撃が世界中を覆ったのには、このような背景があるからでした。